“吉野を盛り上げよう”という目標の下、全国から集結した約60人の吉野アンバサダー。複数のグループに分かれ、商品開発などのプロジェクトに取り組んできました。吉野に対する理解度は各個人で大きく異なるのですが、私たちAチームには吉野の魅力を熟知したメンバーが2人も加わっています。そこで、それぞれが思う吉野の魅力について語っていただきました。
吉野という地が持つ不可思議な力 / しまもりたかこ
私が奈良通いを始めたのは、幼稚園生の頃から。初めて訪れた際、ゆったりした流れの時間とほっこりと落ち着ける懐かしさのようなものを感じ、子どもながらに「奈良のことは、今もこれからも、ずっと好きでいる気がする!」と思ったことを覚えています。
古代人が歩いた道や遺跡、社寺めぐりをしているうちに、私は「この場所でその時代の人たちが、どんな思いをし、どう生きていたのか。もっともっと知りたい」と感じるようになり、万葉びとたちの古代ロマンの世界にハマっていきました。
奈良で行った場所・見てきたことを、自宅に戻って奈良関係の本で確認して照らし合わせてみる。その中でまた新しいエピソードを見つけ、現地で確認・体感するべく再度奈良を訪れる。「この出来事はこの場所で起きていたのか!」という発見をしたり、「この和歌を詠んだとき、彼らはどんな思いでいたのだろうか…」と想像を巡らせたりしていると、眠れなくなるくらい興奮します。
歴史の舞台を実際に訪ね、古代ロマンや万葉集の世界を感じることができることこそ、私が「奈良って面白くてやめられない!」と思う理由のひとつです。
奈良の他地域とはちょっとちがう!?吉野
奈良県の中でも特に飛鳥地域に惹かれ、もう何年も奈良に通い続けている私が、ここ最近興味を持ったのが奈良の奥大和・吉野地域です。きっかけとなったのは、吉野山に建つゲストハウスKAM INNの女将であり、山伏でもある片山さんに出会ったこと。片山さんに初めてお会いしたとき、もっとお話を聞きたい!と直感で思いました。
彼女のお話を聞いていると、頭の中でモヤモヤと考えていたことに対する解決策が見えてきて、気持ちがすっきりします。また、意外と知られていない吉野の「修験道の聖地」としての側面について教えていただけることも、「古代史とはまた別の新しい奈良を知る」という意味で非常に興味深いことのひとつです。
吉野は、奈良の他の地域とは少し違う空気の流れを感じます。歴史上の出来事や場所が現代の人の心と行動にも影響を与え、人生の転機や決断に深く関わっているようで、とても不思議なのです。吉野という地が持つ、不可思議な力のようなもの。私はその力によって、吉野に惹きつけられているのかもしれません。
そう感じているのはどうやら私だけではないようで、何度も吉野を訪れる方の中には「何かに導かれて吉野に通うようになった」という人が少なからずいました。他にも、「吉野を訪れると、今後の生き方について考える転機がやって来て人生に変化が起きる」という人も。何かしらのきっかけ、転機が訪れる不思議な場所。それが吉野という地なのでは…といつしか私は考えるようになりました。
歴史を見ると、私のように吉野に導かれ何度もこの地を訪れている女性がいました。それは持統天皇。交通の便も良くない時代に、彼女は在任中だけでも31回も吉野を訪れていたそうです。それほど頻繁に吉野を訪れていた理由はいまだに解明されてはいないものの、吉野は持統天皇にとって夫・天武天皇とともに壬申の乱に出立することや天皇になることを決意した場所です。彼女にとってもまた、吉野は人生の転機となる土地だったに違いありません。
吉野に導かれるのは、修験道の神の力?
太古の時代から人々を惹きつける吉野の不可思議な力。その正体は、この地で根付く修験道の神の力なのでは?と私は思っています。
きっと、吉野には不思議な神がいるのです。人々はその神に導かれて吉野にやってきて、人生の転機となる何らかのきっかけをつかみ、力をつけて日常へと戻っていきます。そしてまた「ただいま」と吉野の地に帰ってくる……。吉野が「再生の地」といわれる所以も、そのサイクルの中にあるのかもしれません。
人々の決意の瞬間が刻み込まれた地、人生の転機、コトが動くきっかけの場所ともいえる吉野。持統天皇を始め、歴史上の人物たちはどんな思いで吉野を訪れ、通い、リセットして日常に戻っていったのでしょうか。それを知るには、古代史の本を片手に改めて吉野を巡る必要がありそうです。今後も吉野各地に残る歴史の舞台を訪ね、激動の時代を生きた人々の心情に思いを馳せてみたいと思います。
自分を見つめ直すきっかけをくれる吉野
いかがでしたか?今回は、吉野に惹かれ、何度も通っているという2人の「吉野アンバサダー」に、ご自身の吉野に対する思いを語っていただきました。
この2つのお話を踏まえて、強く感じるのは、吉野という地がもつ不思議な引力。都会の生活の中で、いつしか忘れてしまっている自然や歴史、文化があり、その中へ一度身を投じれば、大切な五感を呼び覚ましてくれる、そんな体験が待っています。そして、次の自分に対して、何らかのヒントを与えてくれるのです。
“暮らすように旅をする”スタイルで吉野の魅力に触れてみてはいかがでしょうか?
しまもりたかこ
5歳から奈良がよいを続けること●十年。神奈川に住んでいるのにまるで奈良が庭かのような感覚の神”奈良”川県民。茅ヶ崎市在住。楽しいことおもしろいことに対して地獄耳。近ごろは奈良在住の友人による「イマドキのもっともっとディープな奈良」に興味津々。