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1300年前、皇子がおじいさんに助けられ、神様に祝福された話

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―敵方の追手を追い返すことに成功したその時、空から天女が舞い現れて、琴の音色にひかれて舞いだし、さらには、吉野を代表する神々が降臨し、皇子を祝福するのであった。

どこかで見たことあるような展開ですよね。敵を倒したら神様が表れて祝福してくれるなんて…。例えるなら、そう。どこのRPG?って話ですよね。

信じられないかもしれないですけど、これが能で演じられる謡曲「国栖」のエンディングシーンなんです。能の「国栖」は、大きく3つの話からなる、こんなお話です。

【場面1】半身の魚が泳ぎだす

大海人皇子という皇子が、敵兵に追われて吉野町の国栖という場所まで逃げてきました。さすがに疲れた皇子は、道中に見かけたとある民家で休むことにします。数日何も食べていなかった皇子たちは、その家のおじいさんたちから、アユや根ゼリをごちそうしてもらえることになりました。

皇子はアユを半身食べると、「おじいさんも半分どうぞ」とお返しをします。おじいさんがそのアユを見ると、何やらとても生き生きとしている様子。物は試しにと、おじいさんがアユを川に放つと、そのアユがたちまち泳ぎだしたのでした。

【場面2】船の下にかくまってもらう

そうこうしているうちに、敵兵がおじいさんの家近くまで追いついてきました。おじいさんは、船をひっくり返してその中に皇子を隠します。敵兵から「皇子を見なかったか」と問い詰められますが、おじいさんはシラを切ります。

敵兵も躍起になって、「気になるから、そこの船の下を調べさせろ」と問い詰ると、おじいさんは、大声で近所の親戚に助けを求め、みんなで敵兵を襲おうとするのでした。

これは敵わないと、敵兵も逃げ出します。敵兵が行ってしまったところで皇子を船からお出しし、その無事を喜ぶのでした。

【場面3】天女と神様登場

この部分が冒頭で紹介したエンディングシーンになります。しかも能の「国栖」では、宮中で行われる五節の舞の由来がこれだ!となっています。(余談ですが、吉野山の袖振山にも似た話が伝わっていますよ)
 
なんか、能とか伝統芸能って言われると難しい気がしますけど、ストーリーを追ってみると、意外にもRPGっぽい場面や「ンなアホな」なシーンがあって面白いものです。しかも不思議なことに、吉野町の国栖には、この能の「国栖」とよく似た伝説が今に伝わっています。

 

ジジ河原・ババ河原・犬塚

国栖のおじいさんが、敵兵に追われる皇子を船の下に隠してかくまったという場所です。

ちなみに、この時敵兵はカグハナという犬を連れていたようで、皇子の隠れるあたりを嗅ぎまわったそうです。皇子の危険を感じたおじいさんは、その犬を殺して敵兵を追い出したのだとか。その河原をジジ河原・ババ河原といい、犬を葬った場所を犬塚と呼んでいます。

 

天皇淵・片腹淵

皇子が半身食べたウグイ(アユだとも言います)を放つと泳ぎだしたという場所です。

 

国栖奏

皇子が国栖で一時過ごされたとき、国栖の人たちがウグイ・根ゼリ・一夜酒・モミ(アカガエル)・クリを献上し、応神天皇の時にも奏上した舞を披露したそうです。その舞が後に国栖奏となり、かつては宮中へも舞に行っていたそうです。

 
能の世界、伝説の世界、さらには最近、吉野宮跡とされる建物跡などが確認された、宮滝遺跡(吉野町宮滝にあります)の考古学の世界。
どれも現実世界で直接は見えませんが、こうした前知識を持って国栖などを訪れれば、世界が変わって見えるかもしれません。

また、国栖あたりを中心に、吉野には大海人皇子の伝説がたくさん残りますから、探してみるのもおもしろいかも、ですよ。

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