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ゲストハウス女将が語る吉野山の魅力

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日本三大桜の名所として名高い吉野山。

おかげで吉野の観光客数の約70%が春に来られます。※当宿調べ
当然、混みます。

ここは竹下通りか?それとも道頓堀か?という混雑具合です。ですので、わたしは春以外の吉野をお勧めしたいと思います。人と、生き物と、神仏の共存する、静かな吉野山をみてほしい。それが普段の吉野山だから。

吉野山に住み、この土地の春夏秋冬を知り尽くす女将のわたしが、吉野山の本当の魅力をお伝えしたいと思います。本物の吉野山の楽しみ方とは。いや、そもそも吉野山とは。

奈良県吉野郡吉野町吉野山。「吉野」と呼ばれるエリアは広いですが、その中心地はここ吉野山とされています。桜の名所として名を馳せるよりも、ずっとずっと昔から、神聖な山として神仏の住まう霊峰として人々の信仰を集めていた場所です。

…ところで、みなさん。
『吉野山』という山が存在しないことをご存知でしょうか?『吉野山』はエリアの名称であって、一つの山の名前ではないのです。案外みなさんご存じないのです。

この吉野山、いわゆる『わかりやすい観光地』ではないと思います。はじめて来られる大体の方から言われるのがこれ。

「おもっていたよりも山なんですね…」

そうです。
ここは山岳信仰の聖地。山岳信仰とは「山そのものが神であり仏である」という考え方。太古の昔から、人々はこの地に、“山へ伏し”に来ました。

それが『山伏』。

そう、つまりここは『山』なんです。
ですので…

必 ず 運 動 靴 で き て く だ さ い ね !(ここすごく大切)

そんな「吉野山」の中でも、わたしが特に好きなところ。たくさんたくさんありますが、ガイドブックにあまり書かれていない部分を今回はご紹介したいと思います。

「山」とはいっても、比較的、里の近くに位置している吉野山。参道沿いには家が並び、土産物屋、食堂、宿屋も多いエリアですが、実は、とても野生動物が多いのです。

シカを筆頭に、イタチ、アナグマ、ムササビ、キツネ、フクロウ、アオバズク…
昼間はあまり姿を見かけませんが、日が暮れるとどこからともなく姿をあらわします。街の夜とは違い、山の夜は真の暗闇ですから目視する機会は少ないですが、ガサゴソ、カサカサ、タッタッタ、ギャギャギャッ、ホゥホゥ、夜の山はにぎやかです。

じっと目を凝らすと、月明かりの中に野生動物のシルエットが浮かんだり、満天の星空を見ていたら大きな動物の影が横切っていったり、特に、ムササビが頭上を滑空してゆく姿はバットマンさながらのかっこよさです。
(豆知識ですが、日本のムササビは世界最大級の大きさなんです。英語ではflying “giant” squirrelというぐらいです)

昼間は、もう少しサイズの小さい動物たちを見かけることができます。ケマイマイ、ナミキマイマイなどの珍しい種類のカタツムリ、日本でもこの辺りでしか見られない、ヤマトフキバッタ、ゴホンダイコクコガネ、ルリセンチコガネなどの昆虫(夏にはカブトムシや各種クワガタもたくさん見られます)。

金峯山寺の石垣には絶滅危惧種のミヤマハイゴケという苔が生息していたり、朽ちた桜の木をのぞき込むと粘菌たちがかわいらしい子実体を作っていたりもします。人の営みのすぐ隣で、多様な生き物たちが見られる、とても豊かな自然環境が吉野山にはあります。もちろん、もっと山の奥に行けばこのような自然の多様性はいくらでも見ることができます。

しかし、そこには車が必要だったり、たくさん歩かねばならなかったり、宿泊施設や飲食店がなかったりということが多いでしょう。わたしは、これだけ人が住んでいながら、自然の多様性も並列して存在している点が吉野山の特殊性だと思っています。

都会では人間以外の生き物の営みを身近に感じることは少ないかと思います。そうすると、わたしたち人間がこの世界をまわしていると錯覚してしまう。人間が力を持っているのだと勘違いしてしまう。

山の夜は、自然の力強さや多様性を五感で伝えてきます。わくわくする、ぞくぞくする。耳を澄まし、目を凝らすことで、ますます感性が研ぎ澄まされる。

わたしは昨年の夏、夜の吉野山ではじめてウバボタルの幼虫を見つけました。成虫は吉野山で日中によく見かけていましたが、ずっとホタルの幼虫が見たかったのです。なぜなら、彼らは“幼虫のころに光る”から。

夜の散歩中にその小さな光を見たときは胸が高鳴りました。暗闇の中でないと気が付かないような、目を凝らしていないと気が付かないような小さな光でした。

なぜ彼らは幼虫のころに光るのか?逆に身を隠さねばならない立場ではないのか?そんな疑問をずっと持っていましたが、その姿を見た瞬間そんな小さな疑問は吹き飛びました。すぐに土の中にもぐってしまいましたが、とても神秘的な光でした。

名古屋から吉野山に移住してきた友人は、「吉野山にきてから耳がよくなった」と言います。いわれてみると、わたしも宿泊客の気が付かない物音を聞き分けることがよくあります。

『断食をすると味覚が正常に戻る』というのと同じ効果なのかもしれませんね。吉野ではきっといろんなものがデトックスできる。体が正常に戻るのだと思います。

吉野山にお越しの際は、山の音に耳を澄まし、目を凝らし、静かに五感を研ぎ澄ましてみてください。ヒトの世界では得られない情報が山にはあふれていることがわかるはず。

それがわかれば、世界が広くなる。そしてこの吉野山が、山の神の住む「神聖な山」と言われる意味がわかるはず。

吉野山は五感が磨かれる場所。ぜひ吉野山へ“山”を感じにお越しください。

よしのーと編集部

よしのーと編集部

吉野の隠れた魅力や楽しみ方を紹介いたします。

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