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漢方の里 吉野が誇る健康茶『神然流 大和当帰茶』~後編~

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吉野で栽培される伝統野菜『大和当帰』がすごい! 根は漢方薬に、葉は栄養素がいっぱいと噂のスーパーフードです。更年期障害や生理不順など、女性の健康改善、そして子どもから大人まで免疫力アップを目指して、当帰の“葉”の力を日々の生活に取り入れてみませんか? 吉野で大和当帰を栽培する農家の南榮治さんに、当帰のすばらしさをさらにお聞きしましょう。今度は畑に行ってきましたよ。

吉野の誇るスーパーフード 大和当帰ってどんな味?

当帰は乾燥を好む植物、どんなに日照りが続いても決して水をやることはないのだそう。それでも猛暑では弱ってしまうので、根元にかやあしを敷いて、直射日光のダメージをやわらげてやる。

基本は、見守ること。害になるものがあったら取り除いてやるけれど、やりすぎないし、手出ししすぎない。気候の変化によっては調子をくずしてしまうから、そのときはこんなふうにそっと布団をかけてやる――。

まるで子育て論のようですが、これが、南榮治さんの大和当帰への接し方。「手はかかるけど、当帰の栽培はおもしろいんです」って、親ごころのように慈しみに満ちた気持ちで育てられる大和当帰、畑におじゃました日はとびきりの強い日差しの中で、葉はツヤツヤと輝くように見えました。

よく見るもみじに似た形だけれど、もっと勢いがある。シャープに尖ってギザギザとして、大きいものなら手のひらほどもあり、濃くて強い緑色。同じセリ科のセロリの葉にも似ているけれど、もっと張りがあって硬そうな葉身……「生で食べてみるなら、柔らかいほうがいいかも」と、高さは20センチほどにしかならないという株の内側から、かくれていた若い葉をちぎってもらい、一枚いただいてみます。

ピリリッと伝わってくる刺激、ハーブらしい強いアクセント、たしかにセロリの葉のようだけれど、もっと味が濃いし苦みも主張もある。葉枝の部分なんてさらに驚きで、この風味、パクチーにそっくりじゃないの! たった一枚の葉をかじっただけだというのに、強くて鼻に抜けるような香味がいつまでも爽快に残りつづける……これが当帰の葉かあ! 栄養素の高さが伝わってくるような力強さ。吉野山の旅館では冷奴の薬味に、天ぷらにするとも聞いたけれど、私はみそ煮を食べてみたい。ほろ苦さが生きておいしいだろうなあ。

妥協のないオーガニック農法 真心こもる栽培は苦労の連続

それにしても、シカやイノシシが入りこんだならば、こんなに個性のある薬草であっても一気に食い荒らしてしまうのだとか。積み重ねた苦労も水の泡、南さんにとっても獣害は大問題で、何重にも柵をして用心しているのに被害は絶えず、至難が続いています。

中腰の姿勢で雑草を抜いていきながら、葉を食べ荒らす天敵、キアゲハの幼虫がいないかと、ていねいに調べていく。聞けば聞くほど、当帰の栽培がいかに地道な作業かとわかります。南さんの大和当帰栽培は、化学肥料や農薬には一切頼らない完全なオーガニック農法。「人の口に入るものやから、できるだけケミカルなものは使いたくない」と、牛ふん堆肥や油かす、石灰などを用いた昔ながらのやり方で土作りを行います。

「はじめのころ、収穫をしようとうっかり素手で葉を摘んでたら、あとで手が荒れたことがありまして。こりゃあ、えらいこっちゃと、次から軍手が必須になったけど、驚きまして。葉枝から出たわずかな汁にも、それほど強い力があるのやなあと」

おそらくこれは、クマリンという当帰の持つ成分のしわざで、このクマリン自体には血流を改善するなどの大事な働きがあるものの、手肌への直接の刺激はさぞ強烈だったことでしょう。なんせ、南さんの行う葉の収穫とは、月に一度、30~40キロもの量を三日間かけて、「一枚ずつ手作業で摘んでいく」というもの。こんなしんどいことやってられんわと、一気にカマで刈り取ってしまう生産者もいるそうですが、南さんはそれをよしとしない。見た目にも乱れて好ましくない、それに、「効能にも影響が出てしまうと、ボクは思ってるんです」。生薬は心で扱えといわれるほど、傷をつけぬよう注意して収穫し、ていねいに加工するのが基本の心得。それは薬になる根であろうと、食用の葉であろうと同じことだと南さん。物腰は柔らかく、やさしいまなざしが印象的ですが、その言葉には朴訥ぼくとつとした強い信念が感じられます。

当帰をはじめ生薬は、育つ場所の気候や土壌によって薬効成分に違いが表れるもの。同じ品種でも、栽培地域が違えば同じとはかぎらないのです。七世紀ごろにはもう使われていたという長い歴史を持つ当帰の中でも、なぜ大和当帰がこれほどまで良質な生薬として重宝されてきたのか。それは、吉野が当帰栽培にふさわしい環境であるのはもちろんのこと、手のかかる作業もいとわない南さんのような栽培者たちが、故郷に息づく伝統を真摯に受け継いできたからなのでしょう。

冷え性改善、免疫力アップに! 毎日飲みたい当帰茶ができました

さあ、千数百年も前から人びとが健康維持のよりどころとしてきた当帰、その中でも最高級の吉野の大和当帰を、毎日の生活に取り入れてみましょう。神然流が提案するのは、大和当帰のオリジナル・ブレンドティーです。香ばしい番茶のベースに、ていねいに乾燥させた大和当帰の葉と生姜を合わせました。

ティーポットや急須で美味しく飲める

使われている当帰の葉はすべて吉野産、南榮治さんの畑育ちのもの。そう、わが子のように愛情をかけてお世話をし、一枚ずつ手摘みで収穫される、あの南さんの大和当帰の葉です。貴重な葉がティーバッグのお茶になり、こんなふうに手軽にデイリーに飲むことができるなんて……感無量、私まで胸がいっぱいになります。

和漢ハーブティーらしい風味もあるけれど、メインの番茶が香り高く立ち上がって、すごく飲みやすい。一杯いただいてみてまず驚いたのが、「飲んだそばから体が温まりだす」こと! 足の指先までほわ~っと、しかも不思議なほどすぐに、全身が気持ちよくほぐれていく……これはちょっとすごいかも。

「自分の体を自分で温める力をサポートする」――これぞ大和当帰の本領発揮なのだそう。血のめぐりがよくなって体が温まれば、免疫力がアップし、内臓の働きも高まっていく。体が快調になれば、それは心へもアプローチし、気持ちもすうーっと楽になっていくのがわかります。

当帰ブレンド茶を飲んで思ったこと。私がこれから向きあう更年期、それを一瞬で楽にできる“特効薬”なんてないかもしれない。それよりもっと大切なのは、体や気持ちのアップダウンを減らして、普段からできるだけニュートラルな状態に整えておくということ。心と体が落ち着いていれば、自分らしさを失わずに変化を受け入れていけそうな気がするのです。

感染症の不安もまだまだ消えない日々、だからこそフレキシブルに対応できる心身を持っていたい。神然流の当帰ブレンド茶は、ハードな毎日のお守りのような存在に感じます。まずは一日一杯、習慣にしていくこと。一か月後の私は、今日よりもっと元気でいたいな。美と健康とアンチエイジングを目指して、たくさん笑って免疫力を上げて、ポジティブな気持ちで続けていけそうです。

⇒ 【前編はこちら】
漢方の里 吉野が誇る健康茶『神然流 大和当帰茶』~前編~

※ 神然流 大和当帰茶は現在販売しておりません。ご了承くださいませ。

山本 亜希

山本 亜希

1975年、京都市生まれ。京都外国語大学英米語学科卒業後、海外旅行やグルメ取材、インタビュー記事を中心に東京での執筆活動をへて、2011年から京都市在住。ソウルシンガー、英語講師としても活動。

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