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貯木地域

~歩いてみないと気づかない 癒しの匂いに包まれる貯木の町~

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吉野町の吉野川沿いには現在30社ほどの製材関係の会社が建ち並らぶ“貯木のまち”があり、周辺の山から運び込まれた丸太が原木市場で取引され、そこから買い取られた原木が地元で加工されています。

構造材として建築の梁や柱になったり、板状に加工されて、床や壁に張られたり、加工されて残った部分は割り箸になり、皮は和紙に漉き込まれたり、様々に加工されて余すことなく利用されています。

昔は山奥から伐り出された木が筏に組まれて川を下って運ばれ、今の貯木のまちには貯木池が作られていて、池に浮かべて貯木されていたそうで、”貯木のまち”と呼ばれる所以だそうです。

2019年2月に初めて開催された「よしの木(ウッド)フェス」。その中で企画された“吉野貯木まちあるき”は大人気でした。私はこのまちを通り抜けたことは何度かあったのですが、初めてじっくりとお話を聞きながら歩く機会に恵まれました。


案内は吉野中央木材の石橋さん。若くて熱意があって朴訥とした彼の話に引き込まれながら、制限人数を超える40人ほどの来訪者が青空の下、ゆっくりとまち歩きをしました。

製材所で働く木の専門家が案内するまち歩きは、製材の話だけでなく、貯木の池の名残の話や、製材所間に走っていた鉄道の引き込み線の話など、多岐に渡って楽しく、キョロキョロしてしまいます。

歩いて見ると、こんなに狭い範囲にこんなにたくさんの製材所があるとは!と改めて驚きました。工場がオープンなので、のぞき見しながら歩いて廻ることのできる貯木のまちは、なかなかのレアな散歩コースです。実際に歩いてみて何より魅了されるのがその匂い。私はこの杉や桧の匂いが大好きです。心も身体も癒されます。

山から運び込まれた原木は“市”に掛けられます。土場に並べて積まれて市を待つ原木の丸太は力強さがあって、迫力です。この時点で原木はまだ森の匂いがしています。

樹齢が100年を超えるような木もゴロゴロあります。樹齢100年超え、と言うと巨木を想像するかと思いますが、実は吉野の材は密植されてゆっくり育つので、年輪の幅が狭くて、想像するほどの巨木ではないことにも驚きでした。
他の地域で見た杉の60年生と、吉野で見る80年生が同じぐらいではないかと思います。

魚市場で仲買人がマグロの尾の切り口を見て品定めするように、原木も切り口を見て品定めするようですが、ここで「目利き」の選り出す力が発揮されます。木にも個性があり、美人も居れば、それほどでもない、場合によってはお行儀の悪い子もいますからね。仕入れられた原木は工場の土場に積まれて、加工されるのを待っています。

また、工場周辺にはある程度の厚みや形に一旦カットされ、桟積み(さんづみ)されてゆっくりと自然乾燥されている材がたくさん見られます。

段々生の木の色が消えてグレーになっていくのですが、石橋さんに言わせると「ええ子に育ってる~(=いい具合に乾燥している証拠)」のだそうです。そんな石橋さんの言葉からは、吉野材への“溢れる愛”を感じてしまうのでした。

そして私は知っているのです。そんなグレーになった木も、一旦鉋の刃をあてると、瞬時に美人になって見事な香りを放つことを!吉野の山には森林セラピーの森があって、その中で森の匂いを感じるのもとても癒されますが、その森を成していた杉やヒノキが製材される時に放つ匂いは、また格別な力強さと癒す力があるように感じます。

塀や門などが無い貯木の町は、そこが道路なのか工場の敷地なのか区別がつきにくく、フォークリフトが行き交う中で戸惑うこともあったりしますが…(もちろん、勝手に工場や敷地内に入るのは御法度ですよ)それも一つの魅力だったりします。

そうそう、匂いと言えば…。吉野中央木材さんには「帯鋸の砥ぎ場」があります。

通常は外注で砥ぎに出すそうですが、石橋さんのところでは工場の一角に砥ぎ場があって、自社で砥いでいるそうです。
ここは独特の油の匂いが満ちていて、天井の高い砥ぎ場に掛けられた鋸刃の鈍い光と油の匂いはこれまたかなりマニアックな“秘密の空間”です。

吉野には「吉野の町をなんとかせにゃあかん」との思いで、自分のできることを黙々としている人、思いを同じくして黙々と協力している人達がいます。そして、この石橋さんもその一人。

私はその”黙々と”した空気感に何とも言えない共感をしてしまった一人かもしれません。
背伸びはしないけれど、ちょっとだけ無理をする。続かない打ち上げ花火は揚げないけれど、手の届く線香花火は灯し続ける。

そんな静かに熱い人たちが、吉野には、そしてこの貯木のまちには居るようで、次なる展開が楽しみです!

よしのーと編集部

よしのーと編集部

吉野の隠れた魅力や楽しみ方を紹介いたします。

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