昔から道の端に割り箸の花が咲いていました。割り箸を作る工程で木を天日干しする作業の1つで割り箸の長さ程の木の束を真ん中で縛り、花を咲かせたように広げます。その割り箸の花が庭先にあると割り箸を作ってるお家だと分かるくらいです。通学路のあちこちで見掛けてた事を思い出します。
そもそも割箸の由来については古事記のスサノオノミコトの神話にさかのぼり、歴史学者や箸の研究家が記述しています。その後、後醍醐天皇が吉野の皇居にあらせられた時、下市の里人が杉箸を献上したところ、その美しい木目と芳香を喜ばれて朝夕ご愛用されたので公卿、僧侶にも使用されるようになったと言われているようです。
下市の割箸は、江戸時代に吉野杉で作る酒樽の材料の端材が捨てられるのが勿体ないと、試行錯誤の上に生まれました。現在でも植林された吉野杉の原木を、建築製品等に製材した後に残る外側の利用度の少ない部分(背板)だけを利用して、一本一本加工して吉野杉の美しさを損なうことなく作られ、自然を大切にする心は受け継がれています。
古く伝統のある割り箸、今は天候に左右されない利点もあり乾燥機で乾燥させるのが一般的らしく、割り箸の花を見かけることも無くなりましたが江戸時代から杉箸の町だったんです。古くから吉野の檜割り箸、下市の杉割り箸と呼ばれ、吉野川の上流から木を伐採して川から流して運び、下市町では杉箸、吉野町では檜箸を加工して来たと聞きました。
毎日どこかで皆さんが手に取り、お使い頂いてる割り箸。古い歴史と伝統と日本人らしい精神で今でも1本1本手作業で袋に入れられ、細かい傷やささくれが無いか確認して丁寧に出荷されあなたのお手元に届いているのです。
何気なく使ってる割り箸、その製造工程は実に複雑で長さや太さは勿論ですが、割り箸の種類によっても違う為、1本のお箸になるまでに機械で何度も削られ完成していくのです。今回、特別に機械を動かして頂き1工程だけですが、どんな風に完成していくのか見せて頂きました。モノ創りの原点である拘りや1本ずつ機械に流し、1周させるのですが、繊細な動きで削られてし仕上げられてく流れに感動しました。(天そげ箸です)
私の小さい頃は登下校の時、どこからともなくその機械の音が聞こえてましたが、今ではその機械の音さえも少なくなったように聞いてます。
それでも下市の年配の方の殆どが内職として割り箸に携わってらっしゃいます。私も実際に経験する機会があったのですが、元々割れている割り箸の真ん中を和紙の帯で止めるんですが、これが言わずもがな地味で肩の凝る作業です。高級料亭やホテルで見かける割れてる杉箸を2本合わせて真ん中を和紙で巻いてある元から割れてる割り箸です。
しかし、見えない誰かが美味しく料理を召し上がって下さる姿を想像しつつ割り箸の真ん中に帯を巻きつけました。馴れて来ると巻くスピードも早くなり、音楽を聴きながらルーティンのように巻いては揃えてナイロン袋に入れてを繰り返してました。肩こると言いつつも楽しかったのと目に見えて完成していくのは面白く(笑)なるほど年配の方もこれなら家事の合間にも出来る内職だなと想像してました。
下市の杉箸は少なくなり高級割箸となっています。下市町の人口減少やコスト面や人件費、職人の減少、そして輸入木材によって高級杉箸は少なくはなって来てはいますが、杉の香りと綺麗な木目のある杉の割箸を見かけたら下市の割り箸かな?っと思い出してください。
今回、ご協力頂きました吉本商店さん。ちょうど卸問屋さんになるのですが、お話を聞かせて貰う間も手は袋詰めをされてました。おおよど道の駅には吉本商店さんのお箸を置いてますので、お立ち寄りの際は気にとめて見てくださいませ。