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長年地元で愛される嘉兵衛本舗と天日干し番茶

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戦国武将の毛利元就が説いた「三本の矢の教え」。「矢は一本だけだと簡単に折れるが、三本まとめるとなかなか折れない。一致団結して事に臨もう」という例え話です。

現代日本においてその教えを地で行くのが、奈良県大淀町で約170年間お茶の栽培・生産を行う嘉兵衛本舗かへえほんぽの森本3姉妹。全員が結婚して姓が変わった今でも、父親から技術を受継いで3人でその味を守っています。

(左から)次女・堤有佳さん、長女・上野知佳さん、三女・井川恵里佳さん

「お茶農家に生まれて小さいころから父を手伝っていたし、跡を継ぐのは自然の流れだったというか」
「自分だけだと頼りないし不安だけど、3人いれば何とかなる気がして」
「うちの番茶の味を、誰よりも自分たち自身が一番好きだから」

跡を継いだ理由を口々にそう答えてくれた長女・上野知佳さん、次女・堤有佳さん、三女・井川恵里佳さんに、嘉兵衛本舗のことやこだわりのお茶のことについて伺いました。

 

江戸時代から続くお茶作り

全国的にはあまり知られていませんが、寒冷な山間地特有の気候と土壌がお茶作りに適していた奈良県大淀町では、江戸時代以前からお茶作りが行われてきました。天保年間(1831年~1845年)にこの地で盛んに製茶を行っていた森本嘉兵衛を祖とする嘉兵衛本舗も、当時から代々お茶作りを行う茶農家の1軒です。

かつてこの地には、300軒ほどの生産者が存在していました。しかし戦中・戦後の食糧難の時代に茶畑を芋などの作物に転作させられたり、生産者が別の土地へと移住させられたりしたため町内の茶農家は減少し、今では嘉兵衛本舗を含めてわずか4軒だけになってしまったそうです。

現在では工程の機械化が進み製茶技術も発達しましたが、嘉兵衛本舗では昔ながらの手法で手間暇をかけたお茶作りを続けています。その理由は「それが嘉兵衛本舗の味だから」。こだわりのその製法について教えていただきました。

 

栽培方法

地区に点在している約2ヘクタールほどの嘉兵衛本舗のお茶畑では、新芽が出てから収穫までの間、日光を浴びさせて育てる露地栽培を行っています。日光を遮らずに地力のある赤土で育てることで、力強い味のお茶になります。

森林に囲まれた嘉兵衛本舗の茶畑

 

収穫

お茶の木からは、1年に2~4回茶葉を収穫することができます。一般的には新芽と2回目に収穫された茶葉(二番茶)は煎茶に加工され、旨味が減り渋みが増える3回目以降の茶葉は安価で取引される番茶になります。しかし番茶が看板商品である嘉兵衛本舗では、新芽以外の茶葉は全て番茶に加工しています。

手作業で行われる収穫は常に時間との勝負。二番茶以降の成長を促すため、番茶には使わない新芽は一般的なサイズに成長するよりも早く摘み取ってしまわなければならず、急いで収穫を終えないと茶葉の天日干しが完了する前に梅雨に突入してしまいます。また、収穫時期が遅れると茶葉が育ちすぎて味が落ちてしまうため、春から梅雨までの時期は常にスタッフ総出で点在する茶畑を回っているそうです。

 

天日干し

刈り取られた茶葉は、酵素の働きを止めるために蒸気で蒸されます。その後の乾燥の工程は全て機械を使って行う事業者がほとんどですが、嘉兵衛本舗では昔ながらの製法で天日で干して乾燥させています。

この時、少しでも雨に濡れてしまうと茶葉はダメになってしまいます。一時も目が離せない手間のかかる作業ですが、香り高くまろやかな味の番茶を生み出すためには欠かせない工程なのだそうです。

茶葉をまんべんなく広げて天日で乾燥させる

 

焙煎

嘉兵衛本舗では熱した砂を機械内に循環させ、遠赤外線効果で茶葉を焙じる昔ながらの「砂炒り焙じ機」を使って焙煎を行っています。じっくり時間をかけて焙じることで茶葉から香りが存分に引き出され、香り高いお茶に仕上がります。

焙じた天日干し番茶

 

長年愛される代表商品と新しく生まれた商品

代々受け継がれる手法で茶葉の栽培・生産を行っている嘉兵衛本舗ですが、大切にすべき点は守りつつ商品ラインナップには時代に応じた変化をさせています。

昔から変えないものは、代表商品の天日干し番茶。製法はもちろん、「このパッケージに馴染みがあるリピーターも多いから」とあえてシンプルな外袋デザインも変えていません。ただし、以前と比べるとその販路は大きく広がりました。

「父が若い頃は、卸の他は毎年夏に百貨店で行われる催事に出展して手売りする程度でしたが、ファンの方から『来年の夏まで待っていられない!』というお声をいただき自社で通信販売を始めました」と語る次女で嘉兵衛本舗の統括・堤さん。

また、天日干し番茶のファンだった方のおかげで知名度が上がったこともあるそうです。料理研究家・有元葉子ありもとようこさんの著書『大切にしたいモノとコト(集英社)』の中で自身が愛飲していると紹介されたことや、奈良市の人気カフェ「くるみの木」で提供されたことでさらに有名になっていきました。今では嘉兵衛本舗の天日干し番茶を取り扱ってくれる他社の通信販売サイトも増え、ファンの輪は現在も広がり続けています。

一方で近年は紅茶や手軽で使いやすいティーパック入り商品、生姜や大和当帰といった生薬を配合した健康茶も誕生し、これまでとは違った顧客層も獲得しています。人気商品を詰め合わせた贈答用セットもあるので、お茶好きの方へのプレゼントや自分へのご褒美にいかがでしょうか。

 

嘉兵衛本舗

住所:奈良県吉野郡大淀町中増1561
電話:0746-32-2147
営業時間:AM9:00~PM5:00
定休日:土、日、祝日、その他GW・お盆・年末年始
HP:https://kaheehonpo.com/
 
記事内でご紹介した商品は、嘉兵衛本舗公式サイトにて購入可能です。

うぃーだ

うぃーだ

旅と酒ともふもふ動物を愛するアラサー女子。上場企業の広報部や地域情報誌の編集者を経て、「よしのーと」ライターに。

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