アメリカからやって来て、現在奈良県吉野町で暮らすサイクリング好きの私から見ても、奈良はとてもサイクリングに適した場所だと思います。
県内各地でレンタサイクルサービスも充実しており、多くの観光客が訪れる奈良市に関しては、自転車が借りられる場所や値段などの情報がネット上に多く掲載されています。一方、それ以外のエリアの情報は少ないのが現実です。そこでこの記事では、観光客が比較的少ないエリアでのサイクリングに役立つような情報をご紹介したいと思います!
奈良県南部、山岳が広がる吉野エリアサイクリング
吉野町および周辺の吉野エリアにはサイクリングルートがたくさんあるので、初心者にも上級者にもおすすめです。奈良が誇る1300年の歴史を感じたい方や山道にチャレンジしてみたい方は、ユネスコ世界遺産にも登録されている吉野山エリアを抜けて、さらに山奥へと進んでみてください。
「そんなハードなコースは無理…」という方は、吉野町内を流れる吉野川に沿って、景色を見ながらのんびり走るのもおすすめです。春には桜や新緑、秋には美しい紅葉が見られるので、冬以外ならどのシーズンに訪れても楽しめると思います。夏であれば、サイクリングの途中で吉野川に入って水遊びをするのも良いですね。
吉野町は近鉄電車が通っており交通の便が良いので、東吉野村や黒滝村、天川村といった周辺エリアを巡る際の発着地にも最適です。吉野町をスタートし、吉野川沿いに走って東吉野村を抜け、和歌山へと至るコースは近年人気となっています。
周辺エリアへと続く道以外にも吉野町には細い道がたくさんあり、美しい滝のある森やバス釣りで有名な津風呂湖、ジブリ映画のような光景が広がる高取城跡へも少し走ればたどり着くことができます。ただし、吉野町から出るためには歩道のないトンネルを通過する必要があるので、前後にライトを取り付けてから出発してください。トンネル内ではスピードを出す車が多いので、ライトがないと非常に危険です。
吉野エリアでは、毎年大規模な自転車大会も行われています。以前私は、そんな大会のうちの1つ「山岳グランフォンドin吉野」に招待されて参加したことがあります。コースは過酷でしたが、とても楽しむことができました。皆さんにもぜひ、吉野が誇る雄大な山々、深い森、長い歴史、新鮮な空気などを感じながら、サイクリングを楽しんでいただきたいです。
吉野エリア以外での山道サイクリング
奈良県北部に位置する信貴山と平群町内を結ぶ約10キロの「信貴フラワーロード」は、奈良盆地の景色を眺めながら走ることができるルートです。初めてこの道を走った時、私は“ママチャリ”でチャレンジしたためかなり苦戦しましたが、それでも挑むだけの価値はあると思えるほど素晴らしい体験でした。
他にも、奈良県中部の榛原から室生寺へのルートや奈良市内から若草山へのルートもおすすめです。
古道・山辺(やまのべ)の道サイクリング
山辺の道は奈良盆地の山裾を縫うようにして南北に伸びる古道で、桜井市の大神神社と天理市の石上神宮を結んでいます。この周辺は、1400年前には日本の中心だったとされています。そのため、相撲発祥の地とされる神社をはじめ、歴史あるお寺や神社、天皇陵などがルート沿いに点在しており、奈良の歴史の深さに驚かされます。
山辺の道は自転車道ではなく、ハイキング客も多い場所です。道が狭い部分も時々あるので、混雑を避けて快適に走りたい場合は、平日か夕方の時間帯を選ぶと良いと思います。
日本最古の都・明日香村&高取町サイクリング
深い歴史を持つ明日香村は、都心部からは少し離れており、美しい景色が広がる場所です。明日香村ではマイカー観光ではなく自転車が推奨されており、最寄り駅で気軽にレンタサイクルを借りることができます。
歴史好きの方は、サイクリングだけではなく明日香資料館や石舞台古墳を訪れてみてください。忙しい日常から離れて田舎の風景を見ながらサイクリングをすると、リフレッシュできること間違いなしです。私は何度か明日香村サイクリング中に迷子になったことがあるのですが、どこまでも続くかのような田んぼを見ながらグルグル走ったことすらも良い思い出です。
観光客にはあまり知られていないのですが、明日香村の南隣にある高取町も、明日香村と同じぐらいサイクリングにおすすめの場所です。かつて城下町として栄えた高取町には、武士階級の人々が暮らしており、土佐街道沿いには今も当時の面影が残されています。個人的には、明日香村と比べて観光客が少ない(というよりは、ほとんどいない)高取町の方がお気に入りです。
現代社会と切り離されたような光景が広がる高取城跡も自転車でアクセスすることが可能ですが、舗装がされていない山道を進むことになるので上級者向けかもしれません。もし高取城へ行くのであれば、合わせて壷阪寺にも訪れてみてください。道中にたくさん並ぶ、お地蔵様(五百羅漢)にもぜひ注目してみてくださいね。
奈良サイクリングをより楽しむためのヒント
上記でご紹介したスポットは、いずれも自然が豊かでのどかな風景が広がっている道です。ここまで読んでみて、奈良でサイクリング体験をしてみたくなった方に知っておいてほしい、奈良サイクリングのヒントをお伝えします。
川を目印にして進もう
奈良盆地には多くの川が流れており、道路は川に沿うように伸びています。実際、今回ご紹介した場所は川沿いに進むとたどり着くことができることがほとんどです。そのため、一級河川「大和川」が流れる王寺町をスタートし、いくつかに分かれる支流をたどっていくと違う町に到着することができます。
以前私は、目的地を決めずに直感で選んだ大和川の支流に沿ってサイクリングしてみたのですが、「どこにたどり着くんだろう」とワクワクして、とても楽しかったですよ。
地元の方に積極的に声をかけよう
奈良の人々は、フレンドリーな方が多いです。私の奈良に関する知識のうち何%かは、サイクリング中に地元の方にお声がけし、直接教えていただいた情報といってもいいぐらいです。来日当初、日本語が上手ではなかった私ですが、「とりあえず挨拶だけでもしよう!」と思って地元の方と話すようにしていました。そうやって当時声をかけた人の中には、今でも交流がある人もいます。
地元の名物はぜひチェックを!
奈良でサイクリングをするなら、各地の飲食店やお店もぜひ訪れてください。同じ県内でも町によって名物が異なり、中には古代からの歴史を持つものもあります。
食でいえば、桜井市で作られる日本三大そうめんの「三輪そうめん」や県南部の名物・柿の葉寿司。名産品では、吉野木材を使った製品や国内一の生産量を誇る靴下などが有名です。ネットで事前に調べて訪れるのもいいですが、サイクリング中に地元の方におすすめを尋ねてみるのもいいですね。