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国栖のみんなから愛される古民家のお店「くにす食堂」

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吉野に来たら行ってほしいところ。会ってほしいひと。

第1回:くにす食堂/糟谷かすや陽一さん

吉野といえば「桜」をイメージするかと思うのですが、吉野の魅力は桜だけではないのです。もちろん、吉野のお寺や神社巡りも良いですが、今回は、地元の人に愛される、おすすめのお店&人を紹介したいと思います。

初めて会った瞬間に一目惚れしてしまったこの古民家は、築100年の元薬屋さんを改修した「くにす食堂」です。

一歩中に入った瞬間から、女子たちをわーきゃーさせる可愛い小物や、アンティーク好きをうならせる古くて素敵な家具たちが出迎えてくれます。店主の糟谷さんの選んだセンス良いものたちがあちこちに散りばめられていて、すぐには席につけません。

お店の中の家具の多くは、ご近所のお家に眠っていた古い家具を、彼がこつこつ直したり磨いたりしたもの。古いものが大好きな糟谷さんの元には、時折ご近所さんからお声が掛かり、素敵なものたちが集まってくるそうです。ひとつひとつに物語のある家具を、愛おしそうに糟谷さんが紹介してくれました。

店主、糟谷陽一さん

店主、糟谷陽一さん

器用な彼は、ささっとなんでも作ってしまいます。

このカウンターも仲間と一緒に手作りしたもの。

こちらは古民家の大家さんの家に眠っていた、代々使われてきた箪笥です。今では、本棚として活用されています。これまでしまわれていた箪笥が活用されて「大家さんがとても喜んでくれたんです」と糟谷さん。

近所の学校が廃校になるときに譲り受けた子供用の椅子。小さな子が来ると喜んでこの椅子を使います。

トイレにも可愛いメッセージ。古民家を改装している最中に遊びにきてくれた、糟谷さんの親友トシオさんのいたずら描きにほっこり。

今やこんなにセンス良くスタイリッシュな「くにす食堂」ですが、5年間も空き家の期間があったこともあって、当初は部屋中が荷物でいっぱいだったそうです。

それでも出会った瞬間に「ここだ!」とこの建物に惚れ込み、地元の皆さんにも手伝ってもらいながら4ヶ月かけて掃除をしました。そして、いらないものを捨て、壊して、磨いて、を繰り返して、掃除をし、やっと住めるようになったそうです。

2016年に地域おこし協力隊として吉野に移住してきた彼は、国栖くずという地名も、吉野のこともほとんど知らずにやってきました。

その理由がびっくりです。ここにくる前に働いていた会社の上司がとてもとても素敵な人で、「上司のようになりたい!」と思い、どうしたら上司のようになれるのかと考えたそうです。「そうだ、人を形成するには幼少期の環境が重要なはず!上司の故郷に行ってみよう!」と、当時25歳の彼は思い立ち吉野にやってきました。

地域おこし協力隊での仕事は「国栖の地域を活性化する」こと。国栖の地域は高齢化が進んだ人口900人余りの小さな集落です。まず最初の2ヶ月間はひたすら集落を歩き回り、怪しまれながらもとにかく挨拶をして回りました。そして地域の広報誌に自己紹介のチラシを挟み、「町で見かけたら気軽に声をかけてください!!」とメッセージを付けました。もともと人好きで人懐っこい彼は、次第に国栖の人たちと打ち解けていきました。

2年目には「孫の手プロジェクト」という企画を立案して、「どんな些細なことでもお手伝いします」と、今度は自分の携帯電話の番号をのせたチラシを作りました。すると、「パソコンを教えて欲しい」「畑のお手伝いをして欲しい」「すだれをつけて欲しい」というような依頼が続々と入ってくるようになりました。

そんな風に、まさに孫のように、地域の人の要望に応えながら、少しずつ仲良くなっていったそうです。仲良くなって色々な話をするようになると、地元の皆さんから「気軽にみんなでおしゃべりをする場所が欲しい」という声をよく聞くようになりました。そこで「国栖の小さなマルシェ」という、地域のお母さんたちの手作り雑貨や野菜を売るイベントを開催し、またみんなの笑顔が増えました。

さぁ次は何をしよう。

その当時、ここ国栖には食堂が一軒もなく、みんなが食事をしておしゃべりをする場所が無かったそうです。そこで今度は、地域のお母さんたちと協力して、週に一回の食堂を始めました。そして協力隊の任期が終わる3年目の2019年11月、糟谷さんは独立して国栖の人達念願の食堂をオープンしました。それがこの「くにす食堂」です。

店の中は、いつも地元の人達の楽しそうな声で賑わっていています。一緒に働いているのも、以前から協力し続けてくれている地域のお母さんたちで、みんな楽しそうに働いています。

お母さんたちがわいわい楽しく働いてくれているのを見るのが、何よりの幸せだという糟谷さん。

お母さんたちが楽んで働ける環境であること、来てくれた地域の人に楽しいと感じてもらうこと、そうすればお店に来てくれたお客さんもきっと楽しいはず。というのが、くにす食堂のモットーです。

ランチメニューは週替わりで1つだけ。献立はスタッフのお母さんたちと一緒に考えます。この日のメインはユーリンチー。地元野菜を使った添加物・化学調味料不使用のからだに優しいランチを提供しています。

週替わりランチ/880円

週替わりランチ/880円

お皿も糟谷さんのこだわりの品々で、一目惚れした陶芸作家さんに熱意を語り、全部オリジナルで作ってもらったもの。瀬戸焼、野口淳さんの作品。お店にある1つ1つに物語があります。

自分へのご褒美にぜひ。見た目も美しいくにす食堂特製抹茶パフェはあんこからアイスに至るまで全て手作りです。2種類のアイスの下には抹茶プリンが隠れています。

抹茶パフェ/880円、パフェドリンクセット/1100円

抹茶パフェ/880円、パフェドリンクセット/1100円

店主おすすめの「やわらかぷりん」は大人気メニュー。美味しすぎて一度に2つ頼む人もいるそう!近隣のこだわりMICA卵を使用した、濃厚なとろとろぷりんです。一口目はそのまま。お次は自家製の黒蜜をかけてお召し上がりください。

なめらかぷりん/300円

なめらかぷりん/300円

コーヒーも店主のこだわりセレクト。オススメのスペシャルティコーヒーが楽しめます。コースターはお母さんたちが作ってくれたもので、愛情たっぷり。コーヒーカップは国栖の陶芸家、国栖窯の森本修さんの作品です。

一杯ずつハンドドリップで丁寧に コーヒー/380円~

一杯ずつハンドドリップで丁寧に コーヒー/380円~

お店を出る時に、地元のお客さんから声を掛けられました。「くにす食堂をよろしくね、また来てあげてね」お客さんからこんな風に思ってもらえるなんて、なんて愛されている食堂なんだろう、お店も来ているお客さんもみんなあたたかいなぁと、私もほっこり心あたたまりました。

たくさんの常連さん達のコーヒーチケットが並びます。「コーヒーチケットを作ることが夢のひとつだったんです」と、コーヒーチケットを見て嬉しそうにはにかむ糟谷さん。

吉野の作家の皆さんの手作り雑貨も販売しています。国栖地域は、和紙で有名な場所です。ご近所のうえ和紙工房さんの便箋、封筒各700円。コーヒーを飲みながらお手紙を書くのも良いですね。

店の前の景色も絶景です。夏のきらきらと輝く川の眺めも、秋の赤や黄色の山のグラデーションも、雨上がりの山靄も、いつ来てもとても美しいです。

「雪をまとった山の景色がまた素晴らしいんです」と糟谷さんが教えてくれました。

私は、雪の降った日には、くにす食堂で美味しいコーヒーを飲みながら、1日のんびり本を読んで過ごそうと心に決めています。一人でのんびりするのも良し、みんなでわいわいおしゃべりするのも良し。地域のみんなの要望によって出来上がったこのくにす食堂の、あたたかい空気をぜひ感じにきてください。

次回は、大師山寺 大塚知明住職にお話しをうかがいます。
第2回:人と地域と信仰がつながる場所「大師山寺」
はこちらから!

 

くにす食堂

住所:〒639-3432 奈良県吉野郡吉野町窪垣内246
TEL:050-3716-1101
営業日:金・土・日 11:00~17:00
Facebook:くにす食堂

糟谷陽一さんプロフィール

糟谷陽一さん

糟谷陽一さん

生年月日:1992年2月28日
出身地:愛知県
趣味:ギター、写真、人と喋ること

ナツマヤ

ナツマヤ

イラストレーター・デザイナー。ときどき、かき氷屋。2019年春、2匹の猫と共に吉野に移住。偶然や必然におきたできごとのメッセージに耳をかたむけながらいちにち いちにちをていねいに過ごしたいと思っています。

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