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吉野の森林が育んだ『神然流 ひのきボディーソープ』~前編~

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人呼んで‟吉野のエジソン” 吉野の森を知り尽くす、すごいおじちゃん!

どこのどなたの言葉なのかは「知らん」そうだけれど、喜多さんの事務所には、こんなポスターが額装され掲げてある。

「里山の老人たちの言葉
 ――『風邪をひいたら、ひのきの山に入りなさい』――
ひのきに含まれる成分α-カジノール、T-ムロロールは、桧心材に存在し、強い抗菌性が知られています」

子どものころの遊び場は、いつも吉野の山の中だった、野猿のように走り回り、杉やらひのきの木に登っては、頭の上から花粉をかけあって遊んでた、ひのきのお陰か確かに寝こんだことは一度も記憶にないぞって、70年前のことを愉快に話して笑う喜多さん。

いまのもうご立派な様は野猿でこそないけれど、それでも少しでも目を離したら、次はもう製材所の中のどこへ行ってしまったか、目で追いかけるのが忙しいくらい、やっぱり走り回ってはいらっしゃる。びっくりするようなスピードで、ヒョイヒョイと木材を担ぎ上げ、このポーズ。ちょっとこの角材、一本で40キロもあるというのに、「若いころは一気に3本担げたもんやけどなあ」。上腕にはくっきりと大きな力こぶが浮き上がります。

社長はほんまにすごい、ものすごいタフ、誰よりも率先して動くし、いつ休んでいるのかというくらい、みんな見習うことが山ほどありますと、孫の世代ほどに若いスタッフもその行動力に驚くほどのこの人が、喜多製材所の元気印、社長の喜多繁彰さん。ご本人はお気に召さないようだけれど、地元では“吉野のエジソン”なんて呼ぶ人もいるくらい、あれやこれやとクリエイティブなひらめきで、吉野の木の可能性を広めてきたアイデアマンです。

特に、「木には捨てるところがない」と、ほかの多くの製材所が廃材として扱ってきたおが粉から作り出した『ひのき精油』『ひのき樹液水』は大ヒット。吉野ひのきのブランドで流通しているエッセンシャルオイルは、いまでも喜多製材所の製品のみ。「吉野でも、うちがオンリーワンやな」。日本の森から採れる和の精油として、国内外から注目が集まります。

わき出るような喜多さんのアイデアと行動力、いったいどこからくるものなのでしょう? 

「原点はやっぱり、吉野の山やし、森やな。桜の季節はたしかにええよ。そりゃあ美しい。でも、みなさんが見に来られる桜は、単に横から見る“景色”やからな。横ではない、森は“下から”、体全部で丸ごと体感するのがいちばんいい。森に入って行って、歩いて、空を見上げる。ほなら、迷ってたことがあっても、すーっと、気持ちが落ち着くもんでな。不思議やな、森にはそういう力がある」

ひのきの山には治癒力がある
森林浴の効能には世界が注目

踏みしめる土の感触、落ち葉のすれる音。澄んだ空気がひんやりと、やさしく流れて肌をなで、鳥のさえずりはいつも自由。合間に聞こえる虫の声に、季節の移り変わりを感じる。視線はできるだけ高く、前を向いて。導いてくれるのは、ひたすらにまっすぐと伸びていく木々。枝越しに見えるのが、突き抜けるように青い空。

「ひのきの葉の緑と、空の青さ。このコントラストがいい。胸に染みる」――。

「風邪をひいたら、ひのきの山に入りなさい」と、里山の老人たちの言うとおり、山の治癒力は、きっと地元の人なら肌で体感して信じてきたこと。喜多さんはちょっと特別にお元気すぎるように思うけれど、体の快活さはもちろん、笑顔は底抜けに明るいし、あの次つぎに突飛なアイデアを生む頭脳の明晰さも、アクティブさも判断力も、全部ぜんぶ、「元気の源はひのきの山とともに生きてきたから」といわれれば、ものすごい説得力にただうなずくばかりです。

喜多さんが日常的に行っていること、すなわちこれは“森林浴”。都会で忙しく働く人たちにとっては非日常、遠い憧れのように感じるけれど、いまや外国の人からも、日本人が太古の昔からつづけてきた“Forest Bathing”に、たいへんな注目が集まっています。 “Shinrin‐Yoku”なる英単語まであるそうで、森を歩き、自然に癒しを求めるアクティビティは、ストレス解消法の新しいトレンドなのです。そう、森林浴は日本発祥の習慣。吉野にも、森歩きを目的に訪れる海外からの旅行者が確かに増えてきているのだそう。

人が手をかけ、心を尽くし守り育ててきた伝統の森

世界の多くの場所に森があるのに、人びとはなぜ、吉野の森に惹かれるのか。それは吉野山がよく手入れされ、人によって守られてきた美しい針葉樹林の山だからです。森を歩けば単に気分が晴れるのではなく、ひのきや杉のような針葉樹には大きな“フィトンチッド効果”がある。つまり、樹木から発散される香りのもととなる物質に、殺菌作用があるというもの。ひのきの場合はテルペン類で、強い抗菌性とともに、人の心身に確かなリラックス効果をもたらすことが認められています。

たしかに、外国にも森はあるけれど、針葉樹林を自然にまかせて維持していくのは非常に困難、人による管理が不可欠なのです。人が手入れを放棄してしまうと、より繁栄力の旺盛な広葉樹が混在し、すぐさま荒れた森になってしまう。なるほど、吉野の森が美しいのは、古くから“山守さん”と呼ばれる守り人の専門家がいて、その年ごとの天候に柔軟に対応し、危険を背負ってでも美しい山を守り抜くことを使命に力を尽くしてこられたからなのです。林業が盛んで、多くの人に愛情を注がれ守られてきたという、そういう山だからこそ、吉野山での森歩きはこれほどまでに人びとを魅了するのでしょう。

なつかしい香りをかげば、あのときの記憶が瞬時によみがえる――そんな経験は誰にでもあるものですが、この香りのマジックを利用すれば、たとえ森には出かけられなくても、自宅で森林浴の体験をすることができそうです。それが、アロマセラピー。喜多製材所の喜多繁彰さんの生み出す『ひのき精油』は、原材料はオーガニックひのき100%。このすばらしい精油の効能を毎日のバスタイムに体感できるボディソープが新しく誕生しました。さらなるひのきの癒しの力とともに、つづいてご紹介します。

⇒ 【後編につづく】
吉野の森林が育んだ『神然流 ひのきボディーソープ』~後編~

素材はオーガニック栽培の吉野ひのき100パーセント、自慢の精油の誕生秘話とは?

※ 神然流 ひのきボディーソープはこちらから購入できます

山本 亜希

山本 亜希

1975年、京都市生まれ。京都外国語大学英米語学科卒業後、海外旅行やグルメ取材、インタビュー記事を中心に東京での執筆活動をへて、2011年から京都市在住。ソウルシンガー、英語講師としても活動。

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