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老舗酒蔵が生んだ吉野発リキュール 北岡本店~きっかけ編~

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日本酒発祥の地とされる奈良県で150年以上続く酒蔵と聞くと、どんな会社をイメージしますか?

「伝統や格式を重んじるベテラン杜氏とうじが、昔ながらの味を守っているのだろう」と考える人も多いと思います。しかし、江戸時代創業の北岡本店を率いるのは、まだ30代前半の杜氏さん。しかもこの酒蔵は日本酒だけにこだわらず、オシャレで斬新なリキュールも数々生み出しているのです。

酒蔵に併設している直売所に足を踏み入れた瞬間、目に飛び込むカラフルなリキュールたち。一体なぜ酒蔵がこれほどたくさんのリキュールを開発するに至ったのか、その謎を紐解いていきたいと思います。

 

「日本酒が売れないなら、リキュールを作ろう!」

北岡本店が奈良県吉野町上市かみいちの地で商売を始めたのは江戸時代でした。当時の上市かみいち地区は宿場町として栄え、奈良県内から伊勢や熊野に向かう人々や、吉野地域で林業に携わる労働者が行き交って大変な賑わいだったといいます。創業当時は、それらの人々を相手に醤油や酒を造り商売を営んでいた北岡本店ですが、明治元年(1868年)からは日本酒造りを専門として事業を営むようになりました。

吉野川沿いに建つ北岡本店

しかし、昭和48年(1973年)以降は日本酒の出荷量が下降の一途をたどり、平成20年(2008年)にはピーク時の4割ほどに落ち込んでしまいました。北岡本店も日本酒離れの影響を受け、代表銘柄酒「やたがらす」の出荷量も年々減っていったといいます。一方、市場ではチューハイ・カクテルなどのリキュールの出荷量が大きく増加していました。

小規模な酒蔵の多くは、その状況を嘆きつつ廃業の道を選んだり、細々と商売を続けたりしていたといいます。しかし、北岡本店は「モノづくり」が大好きで、チャレンジ精神溢れる社風ということもあり、日本酒だけに固執せず新しい時代のニーズを受け入れることにしました。

「私たちが『造りたいもの』を売っているだけではダメだ。お客様が『求めているもの』を造らなければ!リキュール開発をきっかけに北岡本店の名前を知り、日本酒を買ってくれるお客さんは必ずいるはずだ。」

今でこそフルーツリキュールを販売する日本酒の酒蔵は増えてきましたが、当時は珍しいことだったそうです。「酒蔵がリキュールを作るなんて邪道だ」と同業者から言われることもあったものの、北岡本店では2010年頃から本格的にリキュール開発・販売に取り組んできました。

 

農家の“いらない”果物がリキュールに大変身

リキュール開発における北岡本店のモットーは「大手企業にはできない良い物を作ろう」。大手メーカーが作る外国産の安い果物と人工甘味料や保存料を使ったフルーツリキュールに対抗するため、北岡本店ではまず地元・吉野の農家さんが育てた梅や柿、キウイを使ってリキュールを作ることにしたそうです。

柿のリキュール

リキュールに使用しているのは、余ったり傷や規格外サイズのため出荷できなかった果実で、本来は農家が処理しなければならない廃棄物です。しかし北岡本店はそういった果物を引き受け、リキュールに加工して生まれ変わらせたのです。この噂は、果物の廃棄処理に困っていた農家さんの間で少しずつ広がり、やがて酒販店や飲食店にも知られるようになりました。

そうしていつの間にか「私が育てたフルーツを使ってリキュールを作れない?」「当店で扱いたいから、地元特産の果物を使ったリキュールを作ってほしい」という問い合わせが全国から舞い込むようになり、製品化されるリキュールの種類はどんどん増えていったそうです。

直売所に並ぶリキュール。これでも全ラインナップのうちのほんの一部

「弊社の悪いところなんですが、商品の種類を増やすことはあっても減らすことがないんです。農家さんから相談されると、未知のフルーツでも商品化してやろうとモノづくり魂がうずいてしまって…。今もリキュールのラインナップは増え続けていて、日本酒の商品数を超えてしまっています(笑)」

そう語るのは、北岡本店営業部部長の羽場さん。お話し好きでフランクな印象の羽場さんですが、実は大きな契約を次々もぎ取る凄腕の営業マンです。

北岡本店営業部部長 羽場さん

羽場さんによると、全国の果物を使ったリキュールを作ると、その果実の産地の人々が「地元のフルーツを使ったお酒です。ぜひお試しください!」といって道の駅などで販売してくれるため、自社のスタッフが地方営業に行かなくても地域の人々や観光客の手に北岡本店のお酒が渡っていくのだそうです。

 

商品力で大手企業の心も掴む、北岡本店のリキュール

奈良を訪れたことがなくても、皆様も知らない間に北岡本店の商品を手や口にしているかもしれません。なぜなら、そのリキュールは日本各地で販売されており、大手飲食店でも提供されているからです!

飲食店の一例は、全国に622店舗(2020年10月末現在)を展開する焼き鳥チェーン・鳥貴族。季節ごとのキャンペーンドリンクの一部に北岡本店のリキュールが使用されています。鳥貴族は国産素材の利用にこだわっており、たとえリキュールの原材料であっても外国産はNG。味や品質に対する要求も強いのですが、「北岡本店さんは、味のイメージを相談すれば技術的に大手では作れないような品質の商品を提案してもらえる」と先方の担当者様からの信頼も厚いのだとか。

鳥貴族の2020年春のキャンペーンドリンクに使用された「ユコウシロップ」

ちなみにこの関係性、羽場さんが営業努力の末に勝ち取ったのかと思いきや、北岡本店のリキュールを知った鳥貴族側から問い合わせが入り始まった大口取引だというから驚きです。また、同じく企業側からのアプローチで契約が決まったというのが小売大手のドン・キホーテ。

当時を振り返り、「展示会でリキュールについて妙な質問ばかりしてくる人がいたんですよ。面倒だなぁ…と思いつつ相手をしたのに、その人は話を聞くだけで去っていきました。その後運営スタッフから突然別室に呼び出され、訪ねるとさっき質問攻めをしてきた方が座っていて『ドン・キホーテのバイヤーだ』と名乗ったんです…。あれはビックリしました」と羽場さん。こうして、北岡本店の商品はドン・キホーテ専用のパッケージをつけられ「贅沢ぜいたく果物」シリーズとして店頭に並ぶこととなったそうです。

日本を代表する大手企業から「ぜひリキュールを取り扱わせてほしい!」と求愛を受ける北岡本店。そのモノづくり魂が生み出した商品は、フルーツ系のみならず予想を裏切る衝撃的なものまで多岐にわたります。続編では、そんな数々のリキュールをご紹介していきます。

 

株式会社 北岡本店

住所:奈良県吉野郡吉野町上市61
TEL:0746-32-2777
営業時間:9:00~17:00
定休日:土・日・祝・お盆・年末年始
HP:https://www.kitaoka-honten.com/
 
⇒ 【後編につづく】
老舗酒蔵が生んだ吉野発リキュール 北岡本店~おすすめ紹介編~

うぃーだ

うぃーだ

旅と酒ともふもふ動物を愛するアラサー女子。上場企業の広報部や地域情報誌の編集者を経て、「よしのーと」ライター兼吉野ビジターズビューロースタッフに。

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