よしのーと!

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大和上市

吉野の商業発展を支えた上市地区のご紹介

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上市という地区は、室町の時代から吉野産の木材の取引が盛んに行われた場所で、吉野の入り口として近隣地域の住民のための商業地域としても発展していました。

また、吉野山や大峯山で修行をする人たちが1番の行場としてまず吉野川で身を清めたところだったことや、川向の本善寺の寺内町であったこと、また伊勢街道筋のため、伊勢詣でや高野詣での拠点としても多くの人が訪れていました。

商店やお食事処、お宿など、たくさんの施設があり賑わっていた時代を経て、交通網の発達や地域の材木業が衰退する中で、それと比例するように様々な商いが店を閉じていったそうです。

しかし、上市の街並みには今もその名残があり、路地を歩くととても趣のある風景の中に、その頃の繁栄をうかがい知ることができます。

近鉄吉野線の大和上市駅は、吉野町に3つある駅の中でも町の入り口としての役割を果たしていて、観光案内所もあります。国道からは高い場所に位置しているので、意外と景色もきれいに見えるんです。吉野山の金峯山寺蔵王堂がちょうど正面の谷に見える穴場だと思っているのですが、実は皆さんすでにご存じなのでしょうか(笑)。

坂の下の、もう営業しなくなったパチンコ屋は、その前は映画館。時代の流れに応じてその形を変えていきます。そのまま吉野川沿いの国道169号線から1本入った旧道を川上方面へ歩くと、近鉄の鉄橋の下をくぐるのですが、私はその度にその姿の色気に惹かれます。そして真上を電車が通る時は結構迫力があるもので、電車好きの人にはたまらないかも。

ちょうどその角には昔ながらのバイク屋さんがあって、小さな子猫たちがお店番をしているのがかわいい。ご主人に声をかけると「持って行っていいよ~」と言われるのですが、思わず「はい!」と言ってしまいそうな自分を制するのが非常に難しい瞬間です。

そこからは古い民家、昔の商店、すっかり改装された新しいお家などが、旧街道らしく、狭い道の両側にぎっしりと並んでいます。そしてこの、それ程広くない地域に、たくさんの立派なお寺が点在していることにも気がつきます。お寺は道の山側に建っていて、それぞれ大きな石垣が積まれているので、その時代に注入された力と材がどれほどのものだったのだろうと想像してしまいます。

「大師山寺」はいくつもの急な階段がつづら折りにつながって、見上げたずーっとはるか上の方に本殿が見えます。うん、これを登っていくのか…と思うとなかなか勇気が出ませんが、祈願はもちろんのこと、上からの絶景もその苦労のご褒美ですね。ちなみに夜には参拝者のために石段にランタンが灯されて、その雰囲気はとても幻想的です。

旧街道からは山側へ、そして川側へつながる小さな路地がたくさんあって、覗いてみるとそこにはちょっとした生活感を感じる空気や、どことなくノスタルジックな風景を切り取ることが出来ます。

途中からは、国道との間にもう1本小さな道があり、そこにも古いままの風情を保たれている事業所さんの建物がいくつかあって、この辺り一帯が木壁や白壁のコントラストが美しい通りです。

上市郵便局と蛭子神社の五叉路からは、左の急な坂を上ると南伊勢街道の名残が強くあり、道は石畳、格子や虫籠窓がある家がたくさん残っています。

家の中は生活しやすいように手を加えておられるのでしょうが、外見は当時の雰囲気を大切にされているのがよくわかります。「伊勢街道」の石灯篭が今も残っていて、辺りには「昔は旅籠をしていたんだよ」とおっしゃるお宅もあったりします。

昔の本屋やシネマの看板が残っていたりする中で、まるでアンティークショップのような昔ながらの金物屋さんは今も営業中で、洋品店や化粧品屋さんや写真館なども。商店街ならではの空気が今も息づいています。

商業の町だった上市も、近年の過疎化の波にはあらがえず、ずいぶん人が少なくなってしまったようですが、私のような人間にはそんなイメージもチャーミングで、ふとした角度に目を奪われてぼーっと見つめて時間が過ぎる、なんていうことも。

最近はUやIターンの若者が少しずつ増え、町全体で古民家を利用した取り組みなども行われていて、いろんな角度から町の小さな魅力が発信されることはとても素敵なことですね。

目的を持って歩くと、目的地に向かって一直線。周りが見えていないことが多い。ただフラフラ歩いてみると、「あれ?こんなところにこんな路地が!」とか、「こんな建物が!」なんていう面白い発見があるんですね。「目的を持たずに歩く」という事がいかに贅沢な時間なのでしょうか。そんな心の余裕を持つのが、私の今年の抱負。

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